ぐへぐへ日記

ゲイがいろんな生き方を模索しながら書いているブログです。

29歳の君に読んでほしい「陽だまりの樹」【アラサー男性】

こんにちは。ぐへぐへ(@guhe46)です。

最近自分が29歳という歳で、いろんなことに焦りを感じているわけですが、男っていうのは思ったより29歳なんていう年は気にしないみたいです。

その証拠にGoogleで検索すると29歳の男性目線の話は全然出てきません。

「29歳 焦り」で検索してもこの検索結果。

実際のところ、29歳と30歳は、本人が大きく変わらなくても、周りからの見られ方が大きく変わる歳だと思います。

ということで、今回は今ちょうど29歳の君に読んでもらいたい「陽だまりの樹」についてです。(アラサーでも!)

陽だまりの樹とは?

幕末期の日本を舞台に、当時の開国、西洋文明と西洋人の流入からやがて続く倒幕、そして戊辰戦争という時代の流れの上で、対照的だが友情で結ばれた男の人生を綿密に推敲されたストーリーで描いている。

手塚作品の中でも『アドルフに告ぐ』と並んで緻密に作られており、絵のタッチも劇画的である。主人公は二人存在し一人は真っ直ぐな心を持ち主、悪く言えば頑固者である武士の万二郎。

もう一人は融通が効き人付き合いが良い性格、悪く言えば女好きで遊び好きでお調子者の蘭方医・良庵である。

本作は作品にとって重要な内容を最終話の最後の1コマで明かすという手法をとっている。

陽だまりの樹 - Wikipedia

29の医者(見習い)・手塚良庵

この漫画の主人公。手塚良庵は登場時、29歳です。

29歳といえば、男として脂が乗り、仕事も5年は経験を積んで、そろそろ役職を得たり、重要な仕事を少しずつ任されるような年齢でしょう。

もちろん給料もそこそこあるし、実家をでて一人暮らしもしている。一人暮らしの経験があるからこそ、掃除洗濯料理もできる人も多いのではないでしょうか。

さて、そこで、まずはこの物語の主人公手塚良庵について軽くまとめてみようと思います。

29で実家暮らしニート

まず、良庵は29で実家暮らしほぼニートです。

父親の仕事の手伝いをしたり、学校に行くための準備を色々しているんでしょうが、まあニートに近いものはあるでしょう。

まあこれ以前の生活は漫画に描かれていないので、しっかりとした仕事をしていた可能性も全然ありますが・・・。

29で仕事経験ゼロ

この良庵さん、冒頭でいきなりもう1人の主人公伊武谷の傷の治療をするシーンがあるのですが、この時点で、施術経験はゼロです。

傷口の縫合すら1回もしたことがないようです。

親の手術のを見たことがあるから、と言って手術をはじめますが、怖すぎます。

必死に手術を拒んだ伊武谷くんの気持ちもよくわかりますね。

さらには、手術を盲腸であろう患者さんの手術に踏み切ろうとしますが、1回も経験がないため、手術をする直前になって諦めてしまいます。

この判断自体はおそらく正しかったのですが、この時点では何もできないというところが際立っています。

29で女遊び(親の金)

さらに、良庵は色々なところで色々な女に手を出しています。

せっかく親の金で大阪の適塾に入学しますが、そこでもまずは遊郭に行って、ナニをしています。

実際に手塚治虫の曽祖父その人は相当の女好きだったようで、この辺は事実に基づいた描写みたいですね。

ちなみに、このクセの悪さは31になったところで治っていません。

将来の結婚相手(後に判明)とゆきずりでイタしてしまった後に、「まあまあの小娘だったが二度抱くほどのタマでもなかったな」なんてほざいてます。


こんな顔してる。

そんなダメダメな良庵が、激動の時代とともに成長していく

こんなにダメダメだった良庵ですが、未熟さゆえに死なせてしまった女郎十三奴、適塾での福沢諭吉との交流、厳しくも面倒見の良い緒方洪庵の師事を受けて成長していきます。

短期間で、医学書を丸暗記する

女ぐせの悪さを指摘され、破門されるという窮地に陥った良庵ですが、

1ヶ月で医学書の内容を暗記する事が出来れば、破門を許すという条件を与えられます。

追い込まれた良庵ですが、福沢諭吉のいやらしい妨害にあいつつも、なんとかこの危機を乗り越えます。

良庵さん、追い込まれると本気を出すタイプのようです。

厳しくも面倒見の良い緒方洪庵のおかげで医者としての基本を身につけることができました。

傷ついた刺客を介抱する

坂下門外の変で傷ついた刺客が突然治療を願いに来ますが、良庵は迷惑そうにしつつも、必死に治療を施し、3人のうち2人の人間の命を救います。

この姿には、それまで良庵のことをけなすばかりだった奥さんも惚れ直したようで、「女の患者にデレッとして診察代もらうよりゆうべの方がうっとりっぱだわ 男らしくって」と言っています。

そしてこの出来事は、のちに良庵が軍医となる可能性を示唆しています。

なんだかんだ言って一番まとも

なんだかんだ言って、この作品の主要登場人物の中では、人間味にあふれていて、一番まともだと思います。

弱いし真面目な強さはないけど、柔軟性があって、安心させてもらえる。

ダイの大冒険でいえばポップ的立ち位置といえるでしょう。しかしポップは少年ですが、この人、アラサーのおっさんです。

ポップに比べたら全く伸びしろがないといってもいい。普通の会社に面接行ったら即お祈りでしょう。

それでも彼の成長、彼の軽やかで柔軟な生き様は見ていて気持ちいいのです。

26-30歳ー伊武谷万次郎

さて、もう1人の主人公、伊武谷については、良庵ほど「成長」を感じられるエピソードは少ないです。

どちらかというと、もう完成してしまっている彼の内なる意識や思考が、幕末という激動の時代のなかで、どういう判断をし、どういう結果を引き起こすか、という点の方が面白いです。

さて、それでは伊武谷の生き様について軽くまとめてみましょう。

カリスマ性、実直な心持ち、まさに武士

彼の特筆すべき点は、そのカリスマ性にあるでしょう。

江戸の震災に伴う火事の際には、独特のカリスマ性を発揮して、民衆を安全なところへ避難させます。

また、彼が指揮した部隊はその統率性もさることながら、たとえお上に逆らうことになったとしても、伊武谷についていくという強い忠誠心が描かれていました。

それと同時に、女性関係では超がつくほどの生真面目な性格で、また主君に対する忠誠心もまさに「武士」という感じの描かれ方をしています。

しかし、彼の武士としての特性こそが、時代の変化に適合できなかったまさにその原因でもありました。

フラグクラッシャー

この人、とても芯が通ってるんですが、世の中が劇的に変化する中で、自分が正しいと思ったことのために動き、そのために、歴史的に「ついていったら成功しそう」な選択肢をことごとく断ります。

橋本左内、西郷隆盛、坂本龍馬といったまさに歴史上のスターたちが、彼に声をかけ、幕府を倒す誘いをかけます。しかし、伊武谷はすべての誘いをことごとく断ってしまいました。

自分の信念のままに選択肢を選んでいったら、猟奇的に殺されてしまったエロゲー初心者の時期の筆者にも通じるものがあります。

彼こそが、歴史上の無名の人物

歴史上の重要人物(西郷、坂本龍馬など)が伊武谷の事を面白い人材と見出し、積極的に利用しようとしますが、彼はあえてどの誘いにも乗りません。

彼には、来たる新しい時代のために、自分の信じた幕府を打ち倒すなんてことは決してできませんでした。

そして、ことあるごとに、「自分は要領が悪い」と自己嫌悪し、選択が正しかったのかどうか悩んでいます。

結果として、伊武谷の下した決断は社会的にみて、「失敗」に終わるものが多く、そして、彼の願った予想はことごとく外れてしまいました。

しかし、ことごとく予想が外れた理由が、「忠義」の心に基づくものだったからこそ、こんなにうまくいかなかったのに、こんなに魅力的なのではないでしょうか。

忠義という理由でうまくいかなかったからこそ、彼の生涯がここまで魅力的なのでしょう。

そして同時に 人として忠義を貫いたからこそ、どうにもならない事態に追い込まれてしまいました。

手塚自身、自分を貫き、歴史に名を残せなかった無名な人間を尊敬するからこそ、物語最後に良庵にこのセリフを言わせたんじゃないかと思います。

歴史にも書かれねえで死んでったりっぱな人間がゴマンと居るんだ・・・・・・

そんな人間を土台にした歴史に残る奴など許せねえ

ちなみに筆者は本作の中では伊武谷が一番好きですね。

27歳ー無類の女好き、ヒュースケンの焦り

「ワタシアト何年日本ニイルカワカラナイ・・・・」

「ソノアイダワタシ年トル若サ消エテシマウ!」

ヒュースケンその人については、かなり重要な人物に描かれていますが、途中退場してしまうので、あくまで脇役扱いです。

しかし、年齢という点から見て、かれの焦りはやはり共感するところがあったので、ここに取り上げてみました。

ヒュースケンの来歴

ヒュースケンはオランダ系の移民で、1853年にアメリカへ移民としておとずれています。

この頃まだ二十歳そこそこと言ったところでしょうか。

オランダにいた時点で、父親を亡くし、アメリカに来た時も苦労をしたと考えられます。

1855年には日本に渡ったとのことで、アメリカについてから2年ほどで日本に渡ったわけですが、その短期間での移動距離は、当時にしては、結構なものですね。

ヒュースケンの焦り


ハリス完全にラスボスだよね。コレ。

さて、そんなヒュースケン、日本に来てからは6年間も頭の固そうなおじさん(タウンゼント・ハリス)とともに監視されて、発狂寸前です。

特にかれは(作中では)女遊びが好きだったようですので、自由に女性と交際できなかったのも、精神的なストレスとなりました。

ヒュースケンは21歳からハリスの通訳として日本に来ており、やることと言ったら、彼の簡単な身の回りの世話くらい。

「ソノアイダワタシシタコトトイエバ・・・・・・」

「ハリスノセワ通詞ソレカラタベルコトトネルコトダケダ!」

28歳という歳で、仕事も、恋も、そして外を軽々しく出歩くということさえもできないというのはどれだけ退屈なことだったでしょうか。

地元に帰った時には、商売をして成功している友人がいるかもしれないし、結婚しているものもたくさんいるかもしれない。「自分は何をしているのか」という焦りは相当なものでしょう。

そして、こちらも良庵に負けず劣らずの女好きであり、日本で自由に行動できない籠の鳥状態のストレスもそれに拍車をかけているようでした。

最後には、勝手に出歩いた挙句に殺されてしまう。自業自得といえば自業自得だが、もう少しどうにかならなかったのかなとは思います。

彼が死んだのは28歳、そして29歳の誕生日の4日前でした。

まとめ

アラサー付近の登場人物の年齢という視点から陽だまりの樹を取り上げてみました。

自分は10代の終わりあたりから、20代の前半くらいまで、人生を投げやりに過ごしていた時期があるので、余計に人より成長が遅い部分があると思っています。

良庵のように、29歳から何かを学校に通って学んで、何かを成し遂げる(良庵の場合、本人の成長の意味合いの方が強そうですが)、ということもできるんじゃないか、ということを漫画の紹介を通じて伝えたかったです。

また、何をやるにしても年齢は関係ないよと言いたいです。

自分が29歳であるということから今回はこの作品を選んでみましたが、それだけじゃなく、40歳、50歳になっても、できないことはあるだろうし、努力することもできるだろうと思うのです。

いくつになるまでにこれができてないといけないとか、この歳でまだこれをしてないとか、そういうことに縛られずに生きたい人は、ぜひ自分の年齢にあった作品を探してみてください。

どんな年齢でも、失敗と挑戦を繰り返している人はいます。

そして、その挑戦が必ずしも社会的な成功につながるかどうかもわかりません。

もしかすると、まったく見当違いの方向に向かって努力してしまっている可能性もあります。

この漫画の登場人物のように、激動の時代に、苦しみ、悩みながらも、努力したにもかかわらず、最終的に成功するのではなく、無名に死んでいった人はたくさんいるのではないでしょうか。

ただ、だからといって彼らの人生や命が無駄だったというわけではないとも思っています。

彼らの人生は物語にできるほどに喜びや悲しみ、怒りや笑いで満ちていて、手塚治虫がここで描きたかったのは、そういうことじゃないのかと思うんです。

陽だまりの樹には、歴史上の有名人物がたくさん出てくるし、伊武谷と良庵はその多くと接点を持ちます。

しかし、特に伊武谷は確固とした自分の考えを持ち、その多くの誘いを断っています。

ここで言いたいのは、必ずしも、歴史に名を残した人だけが偉いというわけではないという事でしょう。

大事なのは、成功して歴史に名を残すことそのものではなく、女と遊んでもいいし、勉強に励んでもいい、立派な人からの誘いを断ってもいいし、何をしたっていいということです。

もちろん本人がその人生に満足していない可能性だって十分にあります。

だけれども、彼らの人生は歴史に名を残せた人間と同じか、それ以上に輝いていたんじゃないでしょうか。





Kindle Unlimitedなら5巻までタダですよ。その後は有料なのがちょっと残念。自分は一気買いしてしまいました・・・。